工房について

~略歴~

・熊本出身

・濟々黌高校 卒業

・洗足学園音楽大学 トロンボーン専攻 卒業

・グローバル管楽器技術学院 卒業

・福岡の楽器店にてリペアスタッフとして従事

・willies7年間勤務

・2024年暮れに合同会社田口管楽器工房 設立

 

■これまでの実績と創業の理念

いま主力の商品がマウスピースになるのでマウスピースに関連することでお話させていただこうと思います。昨年にwilliesというマウスピース専門メーカーから独立して起業しました。会社に在籍中は世の中に出回っているマウスピースの97%くらいをわたしが一人で削って磨いて製造していました。かなり少なめにいっても1万本は製造した計算になります。また多くの日本トッププレイヤーのカスタムマウスピース制作の現場に同席し自分の意見をぶつけてまいりました。そこで役立ったのが中学生のころから受けていたレッスンであり音大での研鑽だったと思います。本気でプロを目指していたからこそ嫌になるくらい練習して見えてきたものがありました。毎日朝の7時前に大学へ行き夜の10時過ぎまで授業や練習をして、晩ご飯を食べたあと友達の家で1時間ゲームをして帰るという生活をしていました。それらの経験に照らし合わせながらディスカッションすることでなんとか本物のプロの要求についていったという感じです。なんだかんだ音楽で飯を喰っていくと決心してから23年がたち忘れたことも多いですがそれなりの経験をつんできて、いまなにか人のために役に立ちたいという思いが強くなってきました。

そして今、わたしたちは楽器本体の制作に取り掛かっています。すべてはこのために、リペアを学び、マウスピースメーカーで“ものづくり”を学んできました。10年以上かけて、ようやくその準備が整いました。

■MASAKIというブランド名に込めた思い

世の中にはさまざまな価値観があり、立場によってそれぞれの正義があることは理解しています。しかし、商売をする中で、誠実さよりも利益を優先する姿勢に触れることも少なくありませんでした。競争があるのは当然のことですが、正々堂々と努力を重ねるのではなく、不正な手段で情報を得ようとする人がいる現実に直面し、違和感を覚えることもありました。

そんな経験を重ねる中で、自分の信じる道を貫き、「人に迷惑をかけない商売をする」という決意がより一層強まりました。ブランド名には、その思いとともに、自分が提供する製品やサービスに責任を持つ覚悟を込めています。自分の名前を冠することで、品質を保証し、お客様に安心して選んでいただけるブランドにしたいと考えています。何か問題が起こったときも、自ら最後まで責任を果たす姿勢を貫き、誠実なものづくりを続けていきたいと思っています

楽器が高すぎる時代に、できること

いまインフレや円安の影響で楽器の価格はどんどん上がっています。部活を始める人も吹奏楽を続けるひともどんどん減っています。このままだと吹奏楽という文化がなくなってしまうのではという危機感を持っています。そしてその思いは年々強くなっています。まず人が減ると、次に楽器屋さんの売上も減る。こんどは減った売上の穴埋めをしようとお店は値上げをして補います。これは一例ですがこうした流れの連鎖で加速度的に価格があがってしまっています。実態を強く感じたのは、とある中古楽器のイベントがあったのですがその時、開場と同時に少しでも安くていいものを手に入れようとお客さんが殺到して大変だったと聞いた時でした。

楽器の価格が二倍になって世の中は大丈夫なのかと疑問に思っていましたが、想像以上に大変な状況になっていると感じました。そんな折ちょうど起業することが決まり自分にいったい何が出来るかを考えたときに、誰かが手の届く価格でいい楽器を出してもいいのではないか、これは人の役にたてるチャンスなのではないかと思いました。

学生でも手の届く楽器をつくる理由

正直もうかりません。キツイです。でもやる意味があると思っています。みなさん学生のころを思い出していただきたいのですがそれなりの金額を出せばプロの奏者もふつうに使っているようなそこそこのいい楽器が買えていました。もちろん高い金額を出せば世界最高峰の楽器を使うことも可能でしたが、学生でも手の届くような価格に素晴らしい楽器たちがあったからこそいまの日本の吹奏楽の発展があったのではないかと思っています。25年前くらいに出た楽器も同じモデルなのにいま倍以上になっていたりして管楽器としてはもはや超高級楽器といえるレベルになり学生が手を出せる値段ではなくなっています。もちろん数々のマイナーチェンジをへて性能もあがっているのでしょうが、学生には手が出せなくなってしまいました。正直すべての価格帯の楽器がそのままスライドして値上がりしているだけなので、昔のいい楽器が買えていた価格帯にその下のクラスの楽器が来ただけです。しかし消えた30年しかり給料は上がっていません。インフレのことを考えると実質下がっています。これらのことを踏まえるといま学生の使っている楽器はどんどん質が落ちている可能性が高いです。製造から40年たっている楽器もザラだと聞きます。全国常連、コンクールトップレベルなどの学校は変わらないのかもしれませんが、全国的にどんな状態になっているのかが心配です。いまは人口が減っていっている段階なので必然的にあまった楽器が市場に出回って足りない分を補完している可能性もありますがそれもいつかは手に入らなくなっていくでしょう。そんな焼野原になったときに、もう“高級楽器”か“外国製の質は高くないのにそこそこ良いお値段の楽器”しか選択肢がない状況を想像すると悲しくなってきます。そんな状態になってほしくないと思ったときにもうこれは「自分がやるしかない!」と思いました。誰かがいつかやるだろうでなんとなく他人事として見ていたのですが、音楽で喰っていくと決めてから23年間、いままで学んできたことのすべてをかけて吹奏楽のために使っていこうと決めました。これは本当に自分のただただ勝手な決意なのですが、もし必要としてくれるひとが一人でもいてくれるのならそのひとのために全力で僕の知っていることを商品というかたちにしてお伝えしていこうという思いです。

正直小さな会社の商売としては値上げすることが正解です。でもそれでは世の中の大きな流れ(日本の衰退という現実)に逆らわず身を任せていくだけのような気がして、見て見ぬふりをしている気がして自分の性に合わないのです。日本の吹奏楽を未来につなぐこと。そのために、利益を追及するだけでなく、必要とする人に良い楽器を届けることを優先します。業界の流れに逆らう道かもしれませんが、それでもやる価値があると信じています。最後にわたしの好きなある刀鍛冶のことばを紹介して最後にしようと思います。

我を斬り刃鍛えて幾星霜 子に恨まれんとも孫の世のため 

田口管楽器工房を何卒よろしくお願い申し上げます。

 

所在地

〒400-0045

山梨県甲府市後屋町554-1後藤店舗4

田口管楽器工房